中部大学の留学制度

中部大学は愛知県春日井市にあり、8学部27学科の学生が広大なキャンパスで学んでいます。

理工系の基盤が強い大学であり、就職率の高さ(3年連続で全国1位)でも知られていることから、在学中の留学制度に注目する人は意外に少ないかもしれません。

しかし、中部大学にはアメリカ・オハイオ大学との長い協定の歴史があり、これまでに2,200人以上の学生を海外へ送り出してきました。留学制度がとても充実している大学でもあるのです。

そうした学生の留学をサポートし、また実際に現地に足を運び研修を企画・実施しているのが、中部大学の「国際交流センター」です。

今回は、同センターのスタッフである筒井博司さんに、中部大学の留学制度の魅力についてくわしくお話をうかがいました。

「不言実行、あてになる人間」の精神で、留学・海外研修に力を入れる

中部大学のオーアストラリア交換留学
── まずはじめに、中部大学が掲げるグローバル教育の方針についてお伺いできますか。

中部大学の教育の根底にあるのは、「不言実行、あてになる人間」という建学の精神です。

“人に信頼される、実行力のある人間を育てる”ためにも、国際的な視野を持つことは非常に重要だと捉えています。そのため、本学では留学や国際交流の機会を積極的に推進しています。

実は、中部大学の国際関係学部は、日本で2番目となる1984年に設置された学部です。基本理念にあるとおり、国際的な視野を持つことを当初から重要視していたことがわかります。

── 海外の協定校との関係が深いのも、そういった歴史があるからなのですね。

なかでも、アメリカ・オハイオ大学(Ohio University)とは1973年から交流を続けており、50年以上にわたる協定の歴史があります。

中部大学は、世界22か国・地域の65大学・機関と協定を結んでおり、学生のニーズに応じた多様な留学ができる環境を整えています。これまでに多くの学生がこの制度を利用して留学してきました。

海外で学びたいという学生さんは、中部大学の留学制度を活かし、ぜひ積極的に留学にチャレンジしてほしいと考えています。

協定締結50周年!オハイオ大学との優れた留学プログラム

中部大学のオハイオ大学交換留学

── 実際に、どういった留学制度の種類があるのか教えていただけますか。

中部大学の留学制度には、交換留学(派遣留学)、長期研修、短期研修などさまざまな形態があります。

交換留学では、協定を結んでいる大学に交換留学生として1学期から1年間滞在し、現地の学生と一緒に学ぶことができます。一般的に高い語学力が必要となりますが、グローバル人材として必要な経験や専門性が身につきます。

派遣先は、先ほどご紹介したアメリカ・オハイオ大学をはじめ、オーストラリアのニューイングランド大学、さらに韓国・中国・タイなどの世界中の大学・機関です。

── ありがとうございます。では、中部大学の留学制度の一番の魅力は、どういったところでしょうか。

特徴的なのは、オハイオ大学での長期研修プログラムです。このプログラムは、語学力に不安のある学生でも、現地での手厚い受入体制のもと安心して参加できるよう設計されています。

2年次に4か月間、現地に渡航して学ぶ内容で、参加者は最大22単位を修得できます。1994年の開始以来、累計で1,800人以上の学生が参加してきました。

現地では、英語の授業だけでなく、異文化コミュニケーションやパブリックスピーキング、スポーツなど、オハイオ大学の学生と一緒に受ける正規授業も用意されています。

いきなり正規授業についていくのは大変ですが、現地では中部大学生専用のサポートクラスを設けており、授業の予習や復習をしっかりサポートしているので、オハイオ大学生と一緒の授業を受けることができるのです。

── 現地のサポート体制が素晴らしいですね。ちなみに、オハイオ大学がある街はどんなところですか?

オハイオ大学があるオハイオ州アセンズは、典型的な大学町です。四季折々の自然が豊かで、学生たちの活気にあふれています。

現地では、地元の小学生と交流したり、アーミッシュ・コミュニティを訪問したり、ワシントンD.C.への研修に参加したりと、さまざまな体験活動が用意されています。

また、同じオハイオ州にあるシンシナティやクリーブランドにはメジャーリーグやNBAのチームがあるため、タイミングが合えば試合を観戦することも可能です。

こうした環境で、多くの楽しい思い出を作って帰国することができます。

中部大学のオハイオ大学交換留学2

短期研修は、「語学」と「社会問題」を組み合わせた新しい学びのスタイル

中部大学のフィリピン体験型研修
── 次に、中部大学の短期研修のプログラムについてもお伺いできますか。

短期研修は、最短8日間から最長1か月ほどの比較的期間の短いプログラムです。語学に加えて異文化理解や専門領域の学びなど目的を絞った研修で、夏休みや春休みに実施しています。

研修先としては、英語圏であれば夏はカナダ、春はオーストラリアが主な行き先です。また、非英語圏では韓国、中国、メキシコなども研修先としています。

コロナが明けてからは、東南アジアを中心に「体験型」の短期研修も本格的に始めました。

──「体験型」の研修とは、具体的にどのような内容なのでしょうか。

たとえば、フィリピンでのSDGs(持続可能な開発目標)体験や、マレーシアで多文化共生をテーマにしたフィールドワークなど、ユニークなプログラムが用意されています。

研修期間は10日前後から2週間ほど。滞在を短くすることで費用を抑えられますし、東南アジアは航空運賃や現地の物価も欧米に比べて安いため、学生の負担を軽くできる点も魅力です。

もちろん、語学研修には今後も意義はあると思います。しかし、機械翻訳の精度やスピードがますます向上している今、これからは「語学を活かして何を学びどんな経験をするのか」という視点が大切です。

そういった意味でも、世界の社会課題や多文化共生、地域産業などの理解に取り組むプログラムを、今後さらに拡充していく予定です。

── 学生さんの将来にとって貴重な体験になりそうですね。ところで、学科が主催する研修もあるとお伺いしました。

そうですね。国際交流センターが全学部向けに実施している研修だけでなく、各学部の学科や各センターが行う研修もあります。

たとえば、保健看護学科では現地の病院を訪問したり、建築学科ではヨーロッパの有名な建築物を見学します。宇宙航空学科ではシアトルで実際に飛行機の操縦を体験したりと、さまざまな活動があります。

このように、それぞれの専門分野に合わせた研修内容で海外へ挑戦することも可能です。

中部大学のメキシコ短期留学

中部大学は留学のための奨学金制度が充実!費用面でも学生を後押し

中部大学のカナダ短期研修
── ここまで、多彩な留学制度があることがわかりました。選考はどのように行われるか、お聞きしてもよろしいでしょうか。

すべての留学プログラムの募集要項には、具体的な選考基準が公開されており、意欲のある学生であれば幅広く挑戦できる機会を用意しています。

選考では、成績や応募動機、指導教員からの所見書、面接での受け答え、健康状態などを総合的に評価します。また、選考後の準備段階では、必要な手続きを計画的に進め、留学に向けて主体的に行動できるかどうかも大切なポイントになります。

── 費用面で不安を感じる学生もいるかと思いますが、奨学金制度などはあるのでしょうか。

中部大学では、留学の形態に合わせた奨学金制度を設けています。

たとえば交換留学の場合、基準を満たし、選考を経た学生は、留学先の授業料が免除されるだけでなく、行先ごとに決められた金額を毎月受け取ることが可能です。

長期研修では、参加者全員に10万円の参加奨励奨学金が支給され、さらに成績優秀者には毎月11万円または5万円が追加で支給されます。研修中のオハイオ大学での授業料は中部大学が負担します。

どの制度も学業成績が大切な選考基準となるため、大学入学後も学業にしっかり取り組むことが必要となります。

── 奨学金制度がかなり整っていることに驚きました。短期研修についても、補助を受けられますか?

はい。短期研修では、成績優秀者(参加者のおよそ3分の1)に10万円が支給されます。面接などを通じて総合的に判断されますが、1つのプログラムにつき最大8名までが対象です。

さらに、中部大学を卒業後、オハイオ大学の大学院で修士号を取得する学生向けの奨学金も用意されています。

短期研修から大学院進学まで、現地で挑戦したい学生を積極的に応援する奨学金制度が整っています。

留学のサポートは大丈夫?留学フェアや帰国報告会でリアルな情報を収集

中部大学の学内国際交流
── 中部大学に入学後は、どのような形で留学の情報を収集できますか?

留学を決める前には、毎年春に開催される「留学フェア」が情報収集の場として人気です。過去の留学経験者や協定校からの留学生、提携業者などが参加し、リアルな情報を直接聞くことができます。

そして帰国後は「報告会」を行っており、研修を通じた学びを発表することで、今後のキャリアへの自信につなげていきます。今年は学長にも参加していただきました。

また、国際交流センターのインスタグラムやFacebookでは、積極的に情報を発信していますので、留学体験記や現地でのイチオシグッズ・食べ物・スポットをまとめた投稿を見ることもできます。

── 経験者のリアルな声を聞けるのがいいですね。それとは別に、個別相談もできますか?

いつでも大歓迎です。学生さん自身が所属する学科でも可能ですし、国際交流センターの窓口では、留学のための手続きや費用など、幅広く相談していただけます。

国際交流センターには、外国籍のスタッフや、海外で長く働いた経験があるスタッフ、実際に留学をしたスタッフなど、国際的な経験を持つメンバーがそろっています。

それぞれのスタッフが自身の経験をもとにお話しできるよう、体制を整えています。

留学なしでも語学力を伸ばせる学内国際交流と「PASEO(パセオ)」

中部大学の学内国際交流2

── 留学をしなくても、学内で語学力やグローバルな視野を伸ばすことはできますか?

もちろん可能です。中部大学には8学部27学科がワンキャンパスにあり、他学部の授業を履修することもできます。国際関係学部や人文学部には英語英米文化学科もありますので、グローバルな視野や能力を得られるような授業が開講されています。

また、留学生と交流できる「カンバセーションパートナー」や、留学に関心のある学生が集まるランチタイム「D.I.テーブル」も用意されています。

さらに、ネイティブ教員や留学生らと気軽に外国語(英語、中国語、フランス語、スペイン語)で会話できる「カンバセーションアワー」や、交換留学生と留学生寮で共に生活する「レジデントアドバイザー」など、多彩な交流の機会があります。

── 学問分野を超えた国際交流が活発なんですね。また、独自の英語クラスもあるそうですが。

本学独自のプログラムに、「パセオ(PASEO)」という英語授業があります。

パセオは、オハイオ大学の協力を得て構成されている OPELT(Ohio Program of English Language Teaching) が担当する、中部大学独自の英語教育プログラムです。

授業はすべて英語で行われ、クラスはレベル別に分かれています。1年の春学期から4年生、さらには大学院生も受講することができます。オハイオ大学長期研修に参加する学生は、2年次の渡航前に最低1学期間履修することを必須としています。

他にも、中部大生であれば、フィリピン人講師とオンラインでつながる「いつでもTalk! オンライン英会話」のレッスンを無料で受講することも可能です。

これらのプログラムは、留学前の語学準備として活用できるだけでなく、留学後にさらに語学力を伸ばしたい場合の継続学習の場としてもお勧めです。

中部大学が考えるグローバル教育の今後

中部大学のカンバセーションパートナー
── これから入学する学生さんには、どのように留学を活用してほしいとお考えですか?

中部大学の留学制度は、初級から上級までの留学プログラムが揃っています。

やる気のある学生さんには、ぜひ交換留学で世界へ羽ばたいてほしいですし、一方で、まだそこまで自信がない学生さんは、まず短期研修や長期研修に参加して、その後に交換留学へとステップアップするのが良いと思います。

短期研修、長期研修、交換留学、そして海外大学院進学へと、自分のレベルに合わせて段階的に海外へ飛び出せるのが、中部大学の留学制度の魅力です。

── では、中部大学の留学プログラムに関して、今後力を入れていきたいことはありますか?

コロナを経て感じるのは、留学を取り巻く意識や状況が大きく変わったということです。

これまでは実績のある研修を継続して実施してきましたが、コロナ明け以降は毎年プログラムの内容を見直すようになりました。変化の速い時代にあって、学生のニーズや関心は常に移り変わりますし、現地の状況も日々変化するためです。

学生の希望にはもちろん応えつつ、それに加えて「将来のキャリアにつながる留学体験」を用意することを意識しています。

そのために私たち自身も現地に足を運び、新しい研修先を開拓したり、協定校を訪問したりして直接情報を集めています。

今後も、現地の状況や学生のニーズを捉えながら、より良い研修を提供できるよう心がけていきます。

留学情報は電子パンフレットがおすすめ!オープンキャンパスに足を運ぼう

中部大学の留学フェア
── 中部大学の留学制度について知りたい受験生や中高生は、どこで情報を得ることができますか?

中部大学ウェブサイトの「留学・国際交流」ページに詳細情報が載っています。

私のお勧めは、『留学・国際交流ガイド』というパンフレットです。ウェブサイト上でそのデジタル版を公開しています。

提携先の一覧や費用、留学先でのスケジュールなど、中部大学での留学の全体像がつかめると思います。

中部大学の国際交流センターの活動については、Instagram(インスタグラム)Facebook(フェイスブック)でも情報を発信しています。実際に留学した学生の生の声や、現地の写真・動画などを見ることが可能です。

また、オープンキャンパスは、中部大学の施設や研究内容を自分の目でみて、大学の雰囲気を肌で感じられる貴重な機会です。初夏と夏に関しては、留学・国際交流相談の場を設けています。

中部大学の国際交流センターより高校生へのメッセージ

── 最後に、中部大学の受験生を検討している高校生へ向けて、メッセージをお願いします。

中部大学は、豊かな教養と専門性、国際的な視野を兼ね備えた人材育成に力を注いでいます。

ワンキャンパスで、8学部27学科の文・理・医・教融合の多種多様な学びが可能です。

どの専攻であっても、留学ができる体制を整えています。各学科での学びはもちろん、学生一人ひとりが持っている目標や目的、達成したいことについても、私たちにご相談いただければ、皆さんが希望する留学を実現できるようサポートしています。

留学というと、最初はハードルが高いと感じる方も多いかもしれません。

もし難しさを感じる時は、どのように準備を進めればよいか、具体的なステップや道筋を一緒に考えてご提案できます。ぜひ気軽に相談に来てもらい、皆さんが叶えたい留学を実現してほしいと思っています。

広大で美しいキャンパスで多様な仲間と学び、世界へ羽ばたく第一歩をぜひ本学で踏み出してください!

── 本日は貴重なお話をありがとうございました。

中部大学の基本情報

大学名 中部大学
学部 経営情報学部、国際関係学部、人文学部、工学部、理工学部、応用生物学部、生命健康科学部、現代教育学部
所在地(住所) 愛知県春日井市松本町1200番地
留学プログラム 交換留学、認定留学、長期研修、短期研修など
大学公式HP https://www.chubu.ac.jp/
SNS 中部大学公式 Instagram
中部大学公式 Facebook

※ 取材時の情報を掲載しています。

全員が留学を叶えられる環境を作る、中部大学の取材後記

中部大学の国際交流センターの筒井さんにお話を伺い、留学制度について詳しく知ることができました。

大学留学と聞くと、まず「交換留学」を思い浮かべる人が多いかもしれません。ですが今回お話を伺って驚いたのは、中部大学は留学だけでなく、海外研修もとても充実しているという点でした。

なかでも印象的なのは、アメリカ・オハイオ大学との長年の信頼関係をもとに実現した長期研修です。

2年次春学期(英語英米文化学科は2年次秋学期)を利用して、現地の学生と一緒に正規授業を受けられるうえ、最大22単位が認定されるため休学の必要もなく、4年間で卒業できるのです。さらに参加者全員を対象とした奨励金も支給されるので、円安や物価高といった経済的なハードルもぐっと下がります。

「ここまで整った制度は、他大学にはなかなか見られない」と思うほど、とても魅力的なプログラムだと感じました。

また、国際交流センターの職員の方々は、現地に出向いて海外研修を企画するなど、目立たないところで大きな役割を果たしています。 安心して留学ができる大学を探す際には、そういった国際交流センターのサポート体制を見るのも、一つの方法かもしれません。

最後にもう1点、中部大学のホームページには、学部ごとの留学者数や学内の選考基準、留学経験者の体験談や費用など、かなり詳しい情報が公開されています。

留学を検討している学生にとって、とても参考になる内容ですので、ぜひチェックしてみてください。

取材日:2025年8月21日
取材/文:永谷 知香
写真提供:中部大学 国際交流センター