清泉女子大学の留学制度

東京都品川区の小高い丘にある清泉女子大学は、スペイン系カトリック修道会を設立母体とした女子大学です。

学生と教職員の距離が近く、あたたかな雰囲気のなかで学びを深められる清泉女子大学。

創立以来変わらない建学の精神を大切にしつつ、新学部の設置やカリキュラム改革など、積極的に変革を進めています。

なかでも留学をはじめとするグローバル教育は、学生が多様な価値観とふれあう機会として重んじられています。

今回は、学務課・国際交流担当の春山さんと国際交流担当副学長の齋藤華子教授に、清泉女子大学の留学制度についてお話をうかがいました。

受け継がれてきた清泉スピリット

清泉女子大学 フランス人学生交流額

── はじめに、清泉女子大学のグローバル教育の方針について教えてください。

本学の設立母体は、スペインで創立されたカトリックの修道会です。そのため、建学の精神もまた、カトリックの精神を受け継いでいます。

それは「人のために尽くす」ということです。身近な人を想う気持ちを育てるのはもちろん、異なる文化や言語をもつ人々とどのように向き合うかを学んでもらいたいと考えています。

海外に出る本学の学生たちも、他者との触れ合いの中で、他者と共に生きる姿勢を身につけ成長することを期待しています。

スペイン語圏との深いつながりをもつ清泉女子大学

── 清泉女子大学の留学制度の特徴は何でしょうか?

1つ目は、大学設立のルーツからスペイン語圏とのつながりが深いことです。

スペインの協定大学は9校あり、主にスペイン語を専攻する学生が短期研修や長期留学をしています。

2025年度より学部・学科の改編を行い、それまでの「スペイン語スペイン文学科」の学びは「総合文化学部総合文化学科」の中に移りましたが、これまで通りスペイン語圏の大学との関わりは密に続けています。

2つ目は、学生一人ひとりに寄り添ったきめ細かい留学支援です。

本学は規模の小さな女子大学です。何百人もの学生を海外に送る規模ではないからこそ、それぞれの学生の希望に沿った形で、時間をかけて相談に乗っています。

専攻の垣根を越えた清泉女子大学の留学プログラム

清泉女子大学 台湾輔仁大学留学

── 清泉女子大学の留学プログラムについて教えてください。

半年以上海外に行くいわゆる「長期留学」、そして数週間で完結する「短期研修」という2つのプログラムが中心になります。

長期留学は、学生によってその目的も、「語学力を身につける」から「現地大学の学部に所属して専門分野を学ぶ」までさまざまです。

留学先で取得した単位は48単位まで、本学の卒業単位として認定されます。そのため休学することなく4年間での卒業も可能になります。

また、英語圏・スペイン語圏に加え、韓国や台湾などアジア各国にも協定校があり、多様な留学体験の場を提供しています。協定先によっては、学生を相互に送り合う「交換留学」や、授業料減免措置もあります。

清泉女子大学 海外協定校

出典)清泉女子大学 Campus Guide 2027(P57)

「短期研修」は、正規の科目として設置されているプログラムです。長期休暇を利用して行いますが、人気の研修は抽選になることもあります。

── どのような研修が人気なのでしょうか?

2025年度は南ドイツ研修旅行が大変人気でした。

総合文化学部には、日本文化領域、国際文化領域、文化史領域の3つの領域があり、本研修は、文化史領域が企画するプログラムです。いわゆる語学研修ではなく、地域の歴史や文化芸術の学びを深め、現地での生活を実感することを目的としています。

美術館や遺跡を巡る際にも本学から専門分野の教員2名が同行するため、学生は単なる観光旅行とは異なる体験ができます。

これまでの行き先は、アジアやヨーロッパ各地です。個人で参加するにはハードルが高いと感じる地域でも、大学教員が同行する研修旅行であれば参加しやすくなります。

── 「短期研修」は自領域外の学生でも参加できますか?

2025年度に開設された総合文化学部の3つの領域間には、壁がなくなりました。そのため、他領域の学生にも開かれたプログラムとなりました。

清泉女子大学 総合文化学部領域

出典)清泉女子大学 Campus Guide 2027(P17)

ただし、希望者が集中して参加者を選考しなければならない場合は、研修目的と合致する領域の学生を優先的に参加させる形になります。

東南・東アジアの学生とともに学ぶ「ASEACCU国際学生会議」

── 清泉女子大学ならではの、学生を海外に送るプログラムはありますか?

ASEACCU(アセアック)国際学生会議に毎年学生を選抜して派遣しています。

本学は、ASEACCU(The Association of Southeast and East Asian Catholic Colleges and Universities:東南・東アジアカトリック大学連盟)に加盟しています。

毎年夏に加盟大学が持ち回りで開催する国際会議には約70の大学から300名以上が参加し、英語を共通言語としてディスカッションやプレゼンテーションを行い、学びを深めています。

── 派遣する学生の選抜はどのようにしていますか?

特に学年は指定せず、1年生から4年生まで広く募集します。近年の派遣人数は2名です。

会議では英語でコミュニケーションをとるため、英語力を身につけていることが望ましいです。一方で、カトリック大学の国際会議として、カトリックの教えを踏まえながら、より良い教育や環境をどう実現するかを学ぶ場でもあります。

そのため、たとえば大学で行うミサのお手伝いをするボランティアグループに所属しているなど、カトリックの教えを理解している学生かどうかも、選考のポイントになります。

選抜された学生は、事前学習の参加を経て本学の代表として派遣されます。

ASEACCU国際学生会議への参加は、学生にとって、国や文化を越えた仲間を作りさまざまな気づきを得ながら、大きく成長していく場となっていることを実感しています。

留学や語学習得をささえる清泉女子大学の奨学金制度

── グローバル人材育成のための支援金や、留学を志す学生向けの奨学金といった、経済的支援は実施されていますか?

TOEFLやIELTSなど、留学時に受験が必要な外部の外国語試験は、回数の制限を設けている場合もありますが、受験料の半額を補助金として支給しています。

英語だけでなく、スペイン語や韓国語、中国語も含め、さまざまな語学試験を積極的に受けるよう、学生には勧めています。

留学の支援については、「国外留学奨学金」があります。成績優秀で、将来、国際交流や国際社会に貢献できる見込みのある学生を若干名選び、奨学金を支給しています。

また、ヨーロッパの「エラスムス奨学金」のように、留学にあたり活用できる奨学金の枠があれば紹介しています。

── ちなみに、留学中の学費はどのように扱われますか?

協定校と学生を相互に交換派遣する「交換留学」の場合は、留学先の授業料が免除となります。授業料は本学に納め、留学先には支払いません。

交換留学以外のケースでは、各大学との協定によっても異なります。

基本的に語学留学は、現地での授業料が自己負担となります。ただしその場合は、本学に納める授業料は半額に減免されます。

半期の留学の場合、現地では半期分の授業料を納め、本学には半期分の半額、つまり年間授業料の4分の1を支払うイメージです。

留学前から帰国後まで一人ひとりに寄り添うサポート体制

── 学費も含め、留学に関する細かな相談や情報収集はどこでできますか?

現在は学務課(国際交流担当)で受け付けています。

また、本学では入学する学生全員に「アドバイザー教員」を必ず配置し、教員と1対1で相談できる体制を整えています。

留学を含め、「何か相談したいことがあったらこの先生に聞ける」という体制は、本学の規模だからこそできるサポートだと思っています。

── 実際にはどのような相談が多いですか?

「留学には行きたいけれど、就職活動はどうしたらいいですか」という相談が非常に多いです。

留学は2年生後期、または3年生で行くのが主流です。ところが近年、就職活動のスタイルが変化し、3年生のうちにインターンシップに参加する必要がある、夏は日本にいる必要がある、といったケースも増えています。

こうなると「本当は留学してみたいけれど、就職活動に差し障るなら諦めようかな」と、留学に消極的になる学生も出てきます。

── 留学時期と、就職活動時期が重なることもあるのですね。学生の皆さんはどのように解決されていますか?

そのような現実があっても、「学生時代のまとまった時期にしか留学はできない」と考えて飛び出していく学生たちの中には、日本で開催されるミーティングに現地時間の夜中にオンラインで参加するなどして、留学と就職活動を同時進行させる学生もいます。

一方で、「留学先での時間を100%楽しみたい」と現地生活に没頭し、帰国後にフルスイングで就職活動に専念する学生もいます。本当にそれぞれですね。

学務課では、「留学と就職活動を両立させた経験」をもつ先輩の話を聞く機会などを設けて、情報を届けるようにしています。

── 先輩方のリアルな経験談が聞けるのはとても心強いですね。

他にも、本学にはキャリアサポート課という学生の就職活動を支援する部署がありますので、留学を志す学生には早い段階で相談に行くよう勧めています。

留学先からでも、必要に応じてオンラインで対応しますし、メールでも相談できます。留学中、異国にいても「相談できる場所がある」と思えるのは安心だと思います。

── 語学力に関する学生からの相談はありますか?

「自分の語学力で、留学先でコミュニケーションを取れるのか不安」という声は多いと感じますね。

語学の勉強は海外に行かないとできない、ということはなく、留学前にもしっかりとした準備が可能です。本学の図書館や学科研究室などにも、たくさんの語学教材があり、積極的に利用してもらいたいです。

現地に行って「英語を学ぶ」「スペイン語を学ぶ」よりも、語学力は日本にいるうちに磨いておいて、留学先では「英語で学ぶ」「スペイン語で学ぶ」ことも学生には勧めています。

海外留学を経験した学生の変化や気づき

── すでに現地で生活を始めている学生さんとも連絡はよく取っていますか?

そうですね。何かあったときは、いつでも連絡が取れるようにしています。

初めて親元を離れる学生や、現地でなかなか友達ができず悩む学生もいますので、メールやオンラインで相談を受けています。

── ホームシックやカルチャーショックに陥る学生にも寄り添われているのですね。具体的にどのようなアドバイスをされるのですか?

海外に行ってすぐは本当に不安だと思うんですよね。

「今日はカフェで注文できた」とか、そうしたささやかな成功体験を一つひとつ日々ノートに書き留める習慣をつけるよう勧めることもあります。

あとで振り返ったら「私、あの頃はカフェで注文すらできなかったんだ」と、笑える日が来るよ、と。

── 小さな「できた」経験を可視化することで、自信を取り戻していけそうです。学生に寄り添ったサポート体制が万全ですね。

本学は、学生と教員との距離が大変近く、「一人ひとりにいかに向き合っていくか」ということを大学としても重視しています。

そのため、規模の大きな海外大学に行くと、雰囲気の違いに戸惑う学生も多いです。自分が留学生であることにさえ周りが気づいてくれない、察してくれない、と驚いてしまうのです。

自分にとって当たり前だったことが、外に出てみて初めて、特別なことだったと気づく経験も、大事なことだと思います。

── 留学を経験した学生の進路に特定の傾向はありますか?

「将来的に海外の拠点に行ける可能性のある会社を受けたい」という声は、帰国した学生からは聞きますね。あとは、「英語やスペイン語が使える部署がある会社を探す」という声もあります。

留学した全員がそうした希望をもつわけではありませんが、皆それぞれの道を見つけています。

「チャレンジ精神をさらに強くして帰ってくる」という共通点はあるように感じます。

キャンパス内での国際交流をささえる「清泉アミーガス」

清泉女子大学 浅草散策

── 学内でも国際交流やグローバルな視野を広げる体験はできますか?

本学には「清泉アミーガス」※という国際交流サポートグループがあります。

※ アミーガスとはスペイン語で「友達」の意

留学生との交流会や学内生活のサポートに携わりたい学生が、100名から150名ほど登録しています。

学務課が主催する「留学生歓迎会」「留学生と浅草散策会」といったイベントごとに参加者を募る形式で運営しています。義務や強制ではない気軽さが良いのか、「卒業してもずっとアミーガスでいたい」という学生もいるほどです。

サークルや課外活動ではありませんが、学生たちは「今度はキムパづくりをしたい」「書道を教えるのはどうか」と活発に意見を出してくれます。

これも本学の教職員と学生の距離の近さならではだと感じています。

── 「清泉アミーガス」以外の学生でも留学生と交流する機会はありますか?

本学に在籍している留学生には、お昼休みを利用して自分たちの文化紹介を必ずしてもらっています。

「フィリピンの交通事情」「韓国で流行りのカフェ文化」「台湾の屋台グルメ」などをテーマに、ランチを取りながら気軽に話を聞けるようなイベントです。

また、「アブレモス」※という、スペイン語会話の特別クラスを設けています。全学科の学生が無料で受講でき、授業以外で自由に、ネイティブスピーカーによる会話レッスンが受けられます。

※ アブレモスとはスペイン語で「話そう」の意

同じようにネイティブの英語の先生と話す「イングリッシュラウンジ」という場も学内にあり、学んだ言語を気軽に練習する機会を提供しています。

本学は留学生の人数がそれほど多くないからこそ、交流の場は貴重です。

自分自身は海外に出る機会はなかったとしても、学内で異なる文化と接点をもつことは学生にとって大切だと考えています。

二学部体制でグローバル教育を受けやすい環境づくりを目指す

── 今後グローバル教育において特に力を入れていきたいことはありますか?

地球市民学部では学科創設以来、国内外各地でさまざまなフィールドワークを実施しています。海外では、マラウイ共和国、インド、フィリピン、ニュージーランド、台湾、韓国などでおこなわれ、今年度はメキシコフィールドワークも実施されます。

また、2024年には、本学とJICA(国際協力機構)との連携覚書が締結され、地球市民学部の学生が、在学中にマラウイ共和国への海外協力隊短期派遣に参加することができるようになりました。

希望者は計画的に科目を履修し、選考を経たうえで、3年次に海外協力隊の活動に参加します。

こうした活動を通して、地球市民学部では、他者と協働しながら行動することができる学生を育てるべく、力を入れて取り組んでいます。

── 地球市民学部と総合文化学部の二学部体制となって大きく変わったことはありますか?

文学部5学科体制では学科間の壁が高く、たとえば、英語英文学科の学生は英語圏へ、スペイン語スペイン文学科の学生はスペイン語圏へ行く、それが当然で、それ以外は単位の認定が難しい仕組みとなっていました。

しかし今は、たとえば専攻の言語は英語でも、スペイン語も学び、スペインに行きたいと手を挙げる学生の背中を押せるようになりました。

また地球市民学部の海外フィールドワークに、総合文化学部の学生が参加することも可能です。これまで以上に、さまざまなことに挑戦する学生が増えることを期待しています。

── 学部の枠組みが変わることで、学生のチャレンジの幅も広がったのですね。他にも変更した仕組みはありますか?

2021年度から、半期(セメスター)の授業編成をそれまでの90分×15週から、105分×13週のカリキュラムに変えました。

夏期休暇の期間を長めに確保することで、留学を希望する人がより行きやすくなることも意図しています。

また、留学の選考や単位認定の仕組みを、より柔軟に整えました。これまでは長期留学というと基本的には3年生からの留学を推奨してきましたが、2年次後期留学の可能性を広げました。

今は就職活動を念頭に、留学に早く行きたいという学生も多いので、そうした希望にできるだけ沿う形としました。

多くの学生にとって大切なのは「4年間でいかにさまざまなことに挑戦できるか」だと思います。

そのために学生一人ひとりの希望をどう実現できるかを、教職員が一丸となって考えて実行しています。

清泉女子大学より受験生にメッセージ

── それでは最後に、清泉女子大学への進学を希望する中高生に向けてメッセージをお願いします。

学務課 春山さん:
清泉女子大学では、少人数の女子大ならではのきめ細かいサポートを心がけています。
安心した環境で、些細なことでも相談に乗っていますので、ぜひオープンキャンパスなどで本学に足を運んでいただきたいと思います。
自分の可能性を信じて、ぜひ本学で一歩前に進んでほしいです。

総合文化学部 齋藤教授:
女子大学と聞くと「おしとやかそう」「大人しそう」といったイメージをもたれるかもしれませんが、清泉女子大学の短期研修、長期留学、フィールドワーク、といった活動の行き先としては、英語圏はもちろん、アジア、アフリカ、中南米もあります。
長い留学にトライするのはなかなか難しくても、たとえ数週間でも、現地を知る機会というのは非常に大きな、成長のきっかけとなるはずです。
今は、どんな情報でも手元で得られますし、行った気分を味わえるかもしれません。
しかし、やはりその現場の空気を知ること。その大切さを、中高生、もちろん大学生にも伝えていきたいと強く思います。

── 本日はありがとうございました!

清泉女子大学の基本情報

大学名 清泉女子大学
学部 総合文化学部、地球市民学部
所在地(住所) 東京都品川区東五反田3 – 16 – 21
留学プログラム 交換留学、協定校留学、一般留学、短期海外研修、海外フィールドワーク、JICA海外協力隊派遣研修等
大学公式HP https://www.seisen-u.ac.jp/
SNS 清泉女子大学公式チャンネル – YouTube
清泉女子大学公式Instagram
入試課 公式LINE
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清泉女子大学公式Facebook

※ 取材時の情報を掲載しています。

時代に合わせて変革を遂げている清泉女子大学の取材後記

私自身はこれまで「清泉女子大学=スペイン語」というイメージを長年もっていました。

しかし今回お話をうかがい、これまでどおりスペイン語圏とのつながりを保ちながらも、アジアを含めた各地域との関係性を広げ、「学生のより良い学びのために」時代に合わせた変革を遂げている事実を知りました。

「チャレンジしてほしい」「成長してほしい」という、教職員の皆様の強い想いが形となり、学生が安心してさまざまなことに挑戦できる環境が整えられている清泉女子大学。

留学という未知なる一歩を踏み出すのに、理想的なホームだと感じました。

取材日:2026年4月14日
取材/文:川崎美和
写真提供:清泉女子大学